研究概要 |
本研究の目的は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールAなどと炭酸ガスを反応させることにより、カーボネートを合成する触媒反応プロセスの開発である。地球温暖化問題が深刻になっていく中で、炭酸ガスの化学的転換は、非常に重要であると考えられているが、決定的な成果はいまだ出ていないといってよい。水素化してメタノールへと変換する反応は、相当に安価な水素がないと成り立たないプロセスになっている。これは、生成物の付加価値が低いことにも大きな要因となっている。これに対して、アルコールと炭酸ガスの反応は、あまり大きな出入りのない反応であり、また、高性能な触媒を用いれば、廃熱レベルの低温でも反応できるところが長所といえる。本研究では、炭酸ガスを付加価値の高い生成物へと変換する新しい有機化学反応を見出すことを目的としている。本年度は、エチレングリコール及びプロピレングリコールを二酸化炭素と反応させて、環状カーボネートを選択的に合成する触媒の開発に成功した。本反応においては、副反応として、ポリカーボネートやエーテルの副生が予想できるが、赤外分光法やガスクロ分析の結果、検出感度以下であることを見出し、環状カーボネートの選択率が99.9%以上であることも明らかにした。触媒開発においては、セリアージルコニア固溶体が有効であることを見出し、特に表面特性としては、昇温脱離法によって弱酸・弱塩基両機能性が重要であることが示唆された。
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