研究概要 |
層状化合物を前駆体とする新規触媒合成法の開発と確立を目的として、(1)層状リン酸バナジウム化合物を前駆体とし、(2)van der Waals力により弱く結合した層間に第3成分としての金属錯体を均一に導入し、(3)焼成により有機分子を抜き取る、という各段階における最適化と機構論の解明を行った。平成15年度は、Fe(acac)_3錯体のVP層状化合物の層間修飾を経由する調製法について検討した。,アルコールを層間化合物とするvanadyl benzylphosphateまたはvanadyl alkylphosphateとFe(acac)_3をトルエン溶媒中で加熱撹拌した。XRD,IR,UV-Vis,電子顕微鏡,EDX,XPSによりキャラクタリゼーションを行ったところ、Fe(acac)_3が、VP層状化合物の持つナノ層間に均一に導入されたことが確かめられた。また、Feの導入量は層間アルコールの種類に依存した.前駆体中の有機物をブタン/O_2/N_2流通下,733Kで除去しFeと複合化した(VO)_2P_2O_7相を得た。 高ロード条件(5%)でのブタン酸化反応により触媒性能を従来法と比較した。従来法(含浸法)でFeを添加した場合はブタン転化率が増加するが,MA選択率は逆に減少した.これは表面に偏析した鉄由来のサイト上で非選択的な酸化のみが促進されたためである。一方,層間修飾法により調製した触媒では、ブタン転化率,MA選択率が共に向上し、表面積あたりのMA生成速度は従来法の2倍以上に向上した。また,層間修飾触媒におけるMA生成速度の違いはバルクの鉄組成の違いによることが明らかとなった。触媒性能向上には(VO)_2P2O_7内部への均一な助触媒の導入が重要であり,これを制御するために本法が有効な手段であることがわかった.
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