単細胞生物である大腸菌と緑膿菌を用いて、細胞内外の状態計測と代謝および行動制御のアルゴリズムを解読した。細菌の危機回避行動は試行錯誤を基本とするものであり、移動ロボットによる再現実験はこのアルゴリズムが危機回避において万全ではないことを示していた。ゾウリムシにガラス電極挿入法を適用することにより、ゾウリムシが忌避物質を感知すると膜電位を迅速にさせることを確認した。細胞の膜電位を変化させることにより前進か後退かの二者択一を行うゾウリムシの危機回避アルゴリズムは、危険を察知すると直ちに逃避行動を開始できる点で、大腸菌のアルゴリズムよりも優れていることが、移動ロボットを用いた実験により確かめられた。線虫C.elegansの行動は、前進、後退、静止、Ω型の方向転換およびコイル型の方向転換の5つの単位行動の組合せから成り、線虫の探索行動のアルゴリズムは、これら5つの定型的行動を化学感覚の受容と統合を経て適切に選択することを可能としていた。哺乳動物などの忌避物質として知られる蛋白質合成阻害剤シクロヘキシミドに、線虫が誘引されるという面白い現象を発見した。変異株を用いた掛合わせとSNP解析により、忌避できない変異株には4番染色体上に変異があることがわかった。コスミドDNAインジェクションにより、その変異はlin-1遺伝子に生じていることを明らかにした。カイコ幼虫の味覚器である小腮肢を熱処理すると、カイコ幼虫が桑葉以外にも小松菜などを齧ることを見つけた。小腮肢の味覚細胞をNa^+チャネル阻害剤で処理すると、カイコ幼虫が桑葉を正しく識別できなくなることも発見した。
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