高密度の量子化渦が発生している超流動乱流状態下では、強制流により量子化渦の吹き払いが起こり、通常の強制対流効果以上の大幅な伝熱促進効果の現れることが示唆され、その検証を目的とした数値シミュレーションが行われた。先ず第1に、本研究用に超流動2流体方程式+Vinenの渦密度発展方程式から成る数値シミュレーションコードの整備が行われた。次いで、強制流の効果による第2音波熱パルスの変形と減衰の緩和に主眼を於いた数値シミュレーションが行われた。結果として、下流方向へ伝播する熱パルスは、流れと共に流される効果で空間的な引き延ばしと振幅の減少、また伝播速度の強制流速分だけの増加、が現れた。振幅の減少効果によって、渦発達が抑えられ、パルス波形の変形が抑制されるのが見出された。上流側へ伝播するものについては、伝播速度が強制流速分だけ減少し、その結果振幅が増大し、やや変形が増長された。しかし、この結果は、フロリダ州立大学のグループの実験結果、上流側へ伝播する熱パルスは検出されない、と矛盾することが指摘された。これに対しては、流入強制流の流体力学的乱れに起因する量子化渦密度増加によるものと考えてこれを計算に導入することにより、計算上でも再現できることが分かった。引き続き、ヒータ近傍の拡散的(ゴルターメリンク型)伝熱部分への強制流効果の評価にテーマを移し、計算を続けている。 実験については、装置・計測の概念について設計前の検討を続けている。
|