1.前年度までの取り組みとして行われた数値シミュレーション結果の内、流れの上流側に伝播する第2音波熱パルスは波形の流れによる圧縮によりその振幅が増大する、に対しては実験結果に反するとの反論があった。これについては流入するHe II流れの(古典的)乱流成分によって誘起される高密度量子化渦が過大な減衰の原因となっていると考えられるので、このことをモデルにとり入れた計算を行い、その検証を行った。 そのために、既開発の超流動2流体方程式+Vinenの渦密度発展方程式から成る数値シミュレーション用コードを本研究用に改良を加えた。具体的には、強制流誘起の高密度量子化渦が流入して、渦発展における初期値の役割を果たす、という効果を取り入れられる様に、Vinenの渦密度発展方程式の発展項と生成項とに改良を加えた。その結果、上流側に伝播する第2音波熱パルスが強い減衰を受けて事実上消失し、実験で得られた様な結果が計算上でも再現できることが分かった。これによって、本計算コードの妥当性が確認された。 2.同じ数値シミュレーション用コードを利用した、超流動乱流状態下での準定常的拡散状伝熱現象(Gorter-Mellink伝熱)に及ぼす強制流の量子化渦の吹き拭い効果の結果としての伝熱促進効果についての数値実験的検証も、他の実験データおよび既存の近似計算コードによる結果との比較を通して行われており、良好であるとの感触を得た。 3.数値計算結果の検証を行い、伝熱促進効果の生じるメカニズムおよびその効果の定量的評価を探るべく行われる、実験計画の策定、実験装置の設計検討(インサート実験流路部)が行われた。ただし、この趣旨に合致する実験が京都大学で実施されつつあり(昨秋の低温工学会でも経過が報告された)、我々の実験実施については慎重に検討すべきことを感じている。
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