研究課題/領域番号 |
15656229
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張 其武 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (30292270)
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研究分担者 |
加納 純也 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40271978)
齋藤 文良 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (10007198)
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キーワード | メカノケミストリー / リサイクル / 硫化 / 廃触媒 / 酸侵出 / 貴金属 |
研究概要 |
本研究は、メカノケミカル(MC)硫化というこれまでにない全く新しい手法を開発し、それをリサイクルに応用する新しい試みを目指した研究である。本研究は、二つの部分から構成される。すなわち、第1は、非鉄金属酸化物の硫化であり、第2は、貴金属の硫化である。第1の研究の対象金属は、銅、亜鉛、鈴など非鉄金属であるが、これらの資源(鉱石)は日本では産出されていないが、大量に使用・廃棄されている。中でも意外と焼却灰中に酸化物として含まれ、その割合は低いながらも灰量が膨大であることから、その回収法の確立が望まれ、それを目指すことにした。硫化の方法は、廃棄物(モデル試料は酸化物、実際の試料は溶融飛灰)と硫黄のMC処理であり、結果として、このMC硫化によりモデル試料(非鉄金属酸化物)は、一定の処理条件下で硫化されることが確認できた。一旦硫化されると、鉱物処理法(浮遊選鉱法)により非鉄金属硫化物は回収可能であり、その濃縮にもある程度成功し、製錬原料となりうることがわかり、この可否は熱力学的検討の結果、統一的に整理できた。それらの基礎研究の結果を踏まえ、実際の溶融飛灰(廃棄物)への応用も検討した結果、亜鉛は17%まで濃縮できた。なお、この溶融飛灰のMC硫化産物については、浮遊選鉱処理を継続して実施し、詳細な検討を含め、研究を推進している。 一方、貴金属を対象としたMC硫化については、廃棄物からイリジウム(Ir)の回収を想定し、検討を行った。Ir回収プロセスとしては、従来より恒温アルカリ溶融処理とその後の酸液によるIr侵出が知られているが、大量の不純物の共存がこの処理プロセスの高コスト化、難処理の要因となっており、新規回収法が望まれている。そこで、イリジウム含有廃棄物と硫黄との混合粉砕(MC硫化法)により、Ir硫化物を得ることと、その酸による侵出を行った。その結果、一定の条件下ではMC硫化が達成でき、また、粉砕産物の酸侵出では、高い収率(99%以上)でIrが侵出されることが判明した。これによって、新しいIr回収プロセスが開発できた。なお、貴金属が容易に硫化物となることから、MC硫化における硫化剤は、硫黄の他に硫化物も使えることが判明した。更に、MC処理のもう一つのメリットは、非加熱で、二次有害物が生じないことであり、この点も今後発展的に工学利用法を見出していく予定である。
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