本研究課題は本年度で終了である。密度限界点でのプラズマの挙動に関する3年間の研究成果をまとめるとともに、得られた知見を考察し、今後の課題と取り組み方を整理した。これまで、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置において放射崩壊を起こす領域に近いプラズマを対象として、加熱を止めたり、追加熱を加えたりすることにより、その放電の時間発展について特徴的な物理現象の時間スケールとそのヒステリシス特性を調べてきた。冷却時の蓄積エネルギーの変化率は放射損失の約2倍大きく、またその変化率はパワーが無い間隔に依存していること、間隔が短い場合は冷却と再加熱の課程は可逆的であるが、間隔の増大に伴って、ヒステリシスを示すようになり、最終的には放射崩壊し、元に戻らなくなることを実験において示した。また、放射崩壊近辺において、プラズマがダイバータを通して壁と接触している状態から、周辺プラズマの放射損失によって、高温プラズマがダイバータから離脱した、いわゆるデタッチプラズマが準静的(2秒程度)に維持されるという新しい運転領域の研究を進めた。これは従来、パワーバランスが不安定であり、過渡的にしか存在しないと考えられていたことを覆すもので、プラズマの強い自律性を示すものである。強い放射損失が回転する磁力線に沿った帯状構造に集中して起こることも本萌芽研究の過程で発見された。また、目本原子力研究所におけるJT-60Uにおける密度限界に関する実験と比較を行い、特に磁気シアが強い配位は周辺プラズマの閉じ込め特性が高密度で劣化しない共通性が見出された。高密度での良好な粒子閉じ込めを示すデタッチプラズマの高性能化および、磁気シアの効果の物理的意味を探ることが今後の課題として抽出された。
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