本研究の目的は、光ピンセットを利用したマイクロサイズ領域の放射線源の制御、放射線照射、分析を行うための要素技術を開発することである。応用として、放射性トレーサーが投与された試料(例えば生体組織)を光学顕微鏡で観察し、レーザー切断と光ピンセットで特定の部分を抽出してその放射能測定を行う。また、単一の微粒子や細胞にX線を照射して、元素分析、その経過を観測することができる。などがあげられる。光ピンセットと放射線利用技術を組み合わせることによって、マイクロサイズ領域での新しい放射線利用が期待される。 光ピンセットを利用した放射能分析システムを試作した。レーザー光を水溶液中の微粒子に集光させて、光トラップされた粒子の放射能をγ線検出器で測定する。半導体励起のCW-YAGレーザー(波長1064nm、最大出力2W)のレーザー光を倒立型光学顕微鏡に導入し、水浸対物レンズ(60倍、N.A.=1.2)で微粒子に集光して捕獲する。試料からのγ線測定には、形状が20×20×1mmタングステン板に80μmの孔が加工されたコリメータを製作した。コリメータの材質と厚さはγ線輸送計算コードを用いて設計し、エネルギー150keV程度までのγ線に対して、十分な分解能を持つことを標準γ線源とイメージングプレートを用いて確認した。コリメータ位置はXYZ軸精密ステージを利用してコリメータ面と試料の距離を可能な限り近づける。また、光学顕微鏡の実視野とコリメータの孔が一致するように調整する。γ線の検出はCdTe検出器と多重波高分析装置で測定する。 放射性核種^<99m>Tcや^<123>IをRIトレーサーに利用することを想定している。本実験装置を非密封の放射線管理区域に移設することが問に合わなかったので、安定同位体のヨウ素化合物が添加されたマイクロビーズを調製して予備実験をおこなった。アルギン酸ソーダーにヨウ素化合物を添加し、(W/O)型エマルション法によって0.5〜3μmのサイズ分布をもったマイクロビーズを調製した。光学顕微鏡で観察される試料面上の実視野は130μm×100μm程度である。光ピンセットによって、特定のマイクロビーズを抽出して、視野内に特定のマイクロビーズのみが観察できるように移動させた。微粒子に放射性放出核種が含まれれば、その微粒子に対して高い検出効率でγ線が検出されるはずである。
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