(1)前年度に引き続き、地理的区分(熱帯、温帯、寒帯、および標高)や景観区分(森林、草原、湿地、湖沼、海洋)による生態系の特徴抽出を文献調査により行い、モデルで扱うべき生態系の分類と特徴整理を行った。各生態系の特徴の差を効率よく記述することを目的として、生態系進化モデルの基本構造であるコンパートメントの調整を行った。これを踏まえて、物質循環の式と進化の式を含んだ、生態系自己組織化モデルの改良を行った。この数理モデルの数値計算によって、環境パラメーターの違いが、進化と個体群動態を通じてどのような異なる生態系を創出するかの見通しを得た。 (2)生態系全体のモデルを作成・改良すると同時に、主要な相互作用に注目した部分系の進化と個体群動態のモデルも提出し、その解析も行った。 (a)生態系において、外部からの有機物の流入の周期的変動と分解の生物活性の周期的変動が、有機物分解量と外部流出量にどのような影響を与えるかを予測するモデルを開発した。(論文発表済) (b)1捕食者-2餌種系において、捕食者の栄養獲得速度を最大にする最適採餌戦略と餌種の食われまいとする防御戦略を考慮すると、3種の共存条件が緩和され、個体数の変動幅が小さくなり安定性に正の効果をもたらす傾向が確認された。(論文発表済) (c)水域における分解過程において、溶存有機物を直接利用するバクテリア種と固形の浮遊有機物に接着してこれを利用するバクテリア種の共存条件を明らかにし、多様性による分解の効率上昇の効果を解析した。(論文発表済)
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