研究概要 |
最先端の形態学的な手法を用いることにより,細胞あるいは細胞内小器官における特定の分子種の局在を明らかにすることが可能であるが,その分子種が,絶対量として,そこにどれだけあるかという情報を得ることは簡単ではない.特定のタンパク質をコードするDNAあるいはRNAの場合には,リアルタイムPCR法を用いることにより,10^<-22>molという感度で,アッセイすることが可能になったが,タンパク質あるいはペプチドのアッセイ感度は放射免疫法(radioimmuno-assay, RIA)でも1-10fmol(fmol=10^<-15>mol)である.そのため,既存の方法では,定量的に解析した遺伝子レベルの現象を,タンパク質レベルさらには細胞レベルの現象と対応させることができない.この問題を解決するためには,ごく微量の特定のタンパク質あるいはペプチドの絶対量を測定する方法を,新たに開発する必要がある.そこで,本研究では,生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone, GnRH)を対象とし,方法の開発の第一段階として,標識ホルモンとしてビオチン化GnRHを用い,競合的な反応の後に,GnRH抗体に結合しているビオチン化GnRHの量を,アビジン酵素(β-Galactosidase,β-Gal)複合体を用い,化学発光により検出することを目指して研究を進めてきた.GnRHは,アミノ酸配列のうちのエピトープとなり得る場所への影響を避けるため,そのN末端をビオチン化したサケ型およびニワトリ型のものを,非標識ホルモンとあわせて合成した.目下,それに続いて,10-100amol(amol=10^<18>mol)の感度を持っており,しかも測定時間が短くてすむアッセイ系を確立するためのβ-Galの蛍光基質をサーベイしつつある.
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