1.タンボコオロギとエンマコオロギを用いて、短日と長日での幼虫発育速度を検討し、以下の結果を得た。1)タンボコオロギでは幼虫期間は長日では約50日であるが、短日では有意に延長し100日以上となった。しかし恒暗条件下では長日型の速い発育を示すものと短日型の遅い発育の2通りに分かれることがわかった。2)齢数は長日では7齢であるのに対して、短日では10齢以上になった。エンマコオロギでは短日で発育が促進され、齢数も少なくなったが、仙台と山口の2系統で比較した場合、仙台系統の方がより同一条件下でも発育速度が速く、遺伝的要素の関与が示唆された。 2.片側の視神経を切断したタンボコオロギを用いて、短日または長日条件下で発育速度を検討した。その結果、長日条件では多くの個体で発育が遅延すること、短日条件下では正常個体と同様の発育過程を示すものに加えて、長日型の早い発育を示すものも現れた。この結果は、正常側と盲目側の視葉時計間の相互作用で光周反応が決定されることを示すものである。 3.視葉ニューロンの単離培養系を確立し、電気活動の長時間記録を試みた。数種の条件を変えた培地を用いてMED電極上で培養を試み、ほぼ良好な培養を得た。活動電位の大きさが十分でなかったが、約24時間のリズムを検出することができた。 これらの結果は、単一の視葉時計が光周期による出力波形の変調を示すことを考慮すれば、視葉概日時計が光周測時系に関与することを強く示唆する。
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