研究概要 |
本課題は,摂氏100度というこれまでに無い高温で蛋白質結晶のX線回折実験を行ない,超高度好熱古細菌等の蛋白質の至適温度と活性の関係を構造生物学的に直接解析することを目指している.初年度は,研究計画に基づき,以下のように実施した. 1.摂氏100度X線回折実験装置の開発 装置的に温度を100度まで上げることそのものは,特に問題とならなかったが,蛋白質結晶が単結晶性を保ったままで温度を上げることに工夫を要した.試行錯誤の結果,まず蛋白質結晶周辺の水溶液を完全に取り去ったうえでパラフィン油に浸漬し,そのままガラスキャピラリ中に固定する方法を確立した. 2.摂氏100度まで昇温可能結晶の探索 蛋白質自身の温度安定性は十分であっても,高温でX線を照射して回折実験を行うと,放射線損傷のために急速にX線回折能を失うことが確認された.このため,ラジカルスカベンジャー使用の検討と,使用するX線波長の短波長化の2つを検討した.現状では,スカベンジャーの使用で,結晶性を損わず放射線損傷を軽減出来るという結論は得られていない.一方,予備実験の結果,短波長化は高温でも効果があることを確認した.しかし,放射光利用が必須となるという欠点が生じる. なお,蛋臼質が結晶中でも溶液中と同じ熱的性質を持っているかどうか,という疑問が生じたため,上記の結晶固定方法を応用して,リガクが開発した超高感度の微量示差熱計で蛋白質単結晶1個で熱測定する方法を確立した.
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