研究課題
円石藻とは、ハプト植物門円石藻綱に属し、細胞表面に方解石型炭酸カルシウムからなる結晶構造体(ココリス)を有する海洋性の単細胞藻類である。白亜紀におけるドーバー海峡の白い崖形成の原因生物としても知られ炭素循環に多大な影響が有るが、その増殖を制御する要因は不明であった。我々は、円石藻の増殖に稀少元素セレンが必須元素として要求されることを既に発見し、円石藻細胞におけるセレンの機能について研究した。円石藻Emiliania huxleyiに放射性亜セレン酸(^<75>Se)を添加し、特異的に^<75>Seラベルされたタンパク質を検索し、cDNAクローニングを行い、6種類のセレノプロテインを発見した。その中のEhSEP2は、セレノシステインを構成成分とし、チオレドキシンドメインを良く保存したプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)である可能性を示した。本年度においては、EhSEP1について解析し、それがチオレドキシンレダクターゼと相同性が高いことを見いだした。その配列は、他の生物のそれとは異なる配列を有していることを明らかにした。更に、細胞内低分子セレン化合物の分析を行った。そして、細胞内へ取り込まれたセレンが低分子のセレン有機化合物として細胞内に保持され、その一部がセレノプロテインへと転換されることが明らかとなった。その低分子化合物として、Se-メチルセレノシステインを同定した。この中間代謝産物は、陸上植物の細胞内に取り込まれたセレンを揮発性のセレン化合物に変換し、大気中へと放出する代謝系で機能するものであった。本研究によって、我々は、円石藻がセレノプロテインを合成してセレンを機能分子として利用する動物型のセレン代謝機構、およびセレンの毒作用を回避する陸上植物にみられる解毒機構の両方を併せ持つ生物であることを明らかにした。
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