研究概要 |
本年度に得られた研究成果は以下の通りである. 1.プロリン水酸化酵素の発現と精製. 高等動物における酸素濃度センサーと想定されている4-プロリン水酸化酵素に急速凍結分光法を応用するため,その大量発現系と精製手法の確立を試みた.発現系としては大腸菌を用い,His-tag融合蛋白質で精製した後,TEVプロテアーゼでHis-tag部分を切断することで,tagのないP4Hを精製することに成功した.蛋白質の純度としてはSDS電気泳動から90%程度,収量は培地1リットルあたり0.21mgであった.収量についてはまだ改善する必要はあるが,通常の分光法であれば測定可能であるので,本年度は過渡的な分光情報の基礎となる定常状態での分光学的性質を検討することとした. 2.銅イオン置換プロリン水酸化酵素の金属イオン周辺構造 4-プロリン水酸化酵素への金属イオンの配位を確認するため,アポ蛋白質に銅イオンを加え,そのEPRシグナルを測定した.その結果,g_⊥=2.05と考えられるシグナルとg_<//>=2.21と考えられるシグナルが観測され,これは銅イオンに窒素原子が2個配位した典型的なEPRスペクトルパターンであった.このEPRシグナルの解析からA_<//>=14mT,が求められ,プロリン水酸化酵素の鉄イオンの配位環境は,従来報告されているタウリン水酸化酵素の場合と類似であることが明らかになった.また,タウリン水酸化酵素の場合に補欠分子として必要なα-ケトグルタル酸を4-プロリン水酸化酵素へ添加したところ,このESRシグナルに変化がみられ,タウリン水酸化酵素同様,4-プロリン水酸化酵素においてもα-ケトグルタル酸が鉄イオンに配位することが示された.
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