ロドプシンは典型的なG蛋白質共役型受容体である。これまでの研究において、活性化型が安定であり、さらに全トランス型レチナールが直接結合することで活性化状態になる特殊なロドプシンを見いだしていた。本研究においては、このロドプシンの特性を分光学的・生化学的に利用して、G蛋白質共後型受容体の活性化状態の解析を試みた。 (1)ウシロドプシンにおいて、レチナールから<4.5Åに存在するアミノ酸残基に対応するこのロドプシンのアミノ酸残基に変異を網羅的に導入し、アゴニストである全トランス型レチナールと相互作用するアミノ酸残基の同定を行った。その結果、2つの残基(Trp265とAla269)を同定した。Trp265の変異は、不活性状態と活性化状態の両方の吸収スペクトルを変化させるのに対し、Ala269の変異は活性化状態の吸収スペクトルのみを変化させることを発見した。 (2)Trp265を19種類すべてのアミノ酸に置換した変異体を作製した。その結果、発現したすべての変異体のオプシンシフトは、基底状態と活性化状態において、似た傾向を示すことを見出した。以上の結果かち、Trp265は不活性状態と活性化状態においてレチナールとのとの相互作用があまり変化しないことが示唆された.一方、Ala269では、活性化状態では、レチナールとの距離が近づき、相互作用が強まると考えられた。この2つの残基は共に、ウシロドプシン結晶構造中でヘリックス6に存在し、αヘリックス1巻き分しか位置が異ならないので、G蛋白質活性化メカニズムを考える上で興味深い知見である。
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