研究概要 |
遺伝子改変マウスの作出は,複雑なin vitroでの遺伝子操作,ES細胞の培養,そして胚操作による個体の作出など,多数のステップからなる長期に渡っての綿密な実験を必要とする.本研究では大腸菌内相同組換え法を導入することにより,BACクローン上で迅速に遺伝子改変を進める遺伝子構築技術を確立する.このため,セレクションマーカとしてジフテリア毒素Aフラグメントを発現するベクターを改変し,Srf I, Pme Iなどのrare restriction siteを組込み,ES細胞に導入する際に直鎖化するのに便利なプラスミド,pBSDT-AIIを作成した.次に,ES細胞内駆動用PGK Promoterと大腸菌内用EM7 promoterのキメラプロモータを使用し,さらにはES細胞内でNeoを選択的に除去できるようにするため,flp recombinaseの認識サイトとlox Pを両端にもつ遺伝子カセットをもつプラスミド,pGPS211oxFRTNeoを作成した.このカセットを実際にES細胞内に形質導入した結果,ES細胞にG418耐性を付与することが示された.さらに,BACのChloramphenicol耐性遺伝子に,ori VとZeocin耐性遺伝子からなる遺伝子断片を相同組換え法により導入し,BACコピー数の増加を誘導できる系を構築した. これらの遺伝子モジュールを用いることにより,条件的遺伝子破壊が可能となるalleleを,mVam2,mVam6,Syntaxin-7,V-ATpase a3について構築した.これらをES細胞に導入した結果,細胞レベルで相同組換えが起きたクローンを全てのalleleに関して確立することができた.本手法の導入によって多細胞生物の遺伝子変換の最初のステップをきわめて効率化・迅速化することができた.
|