多細胞生物において個体発生の終結時点まで進んでいる組織分化した体細胞の核は、それぞれの分化に従って特定の遺伝子を発現するように制御を受けている。遺伝子発現制御を受けている組織分化した体細胞の核は、卵や卵母細胞に戻すと、それまでの制御パターンが解消されて個体発生のスタートの状態に戻る(初期化)。本研究では、核膜孔複合体が分子流通の場として機能する他に、核の枠組み形成やクロマチン構築と密接に関与する可能性が示唆されている知見を踏まえ、初期化における核のリモデリングに伴う核膜孔複合体の性状変化の解析を通して、初期化に伴う核機能の変化を調べる新たな糸口を開くことを目的とする。本年度は、実験系として用いるアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵抽出を利用した核のリモデリング無細胞系を立ち上げることに集中した。また、核膜孔複合体とクロマチン構造の関連に力点をおくため、核膜孔複合体の指標となるXenopus運搬体(importin・、importin・、importin7)、及び、クロマチン構造構築に関与するXenopusクマドリン(ヒトKi67のXenopusホモログ)をクローニングし、各クローニング因子に対する抗体を作製した。さらに、クロマチンと核Scaffoldのマーカーとして、Xenopus condensin及びtopoisomeraseIIの抗体作製を終えた。実験準備が整った段階に入った。
|