研究概要 |
精子形成過程での細胞質mRNAポリA鎖伸長制御に関して研究を行い,以下のような新しい成果を得た。 (1)精細胞に存在する細胞質型ポリAポリメラーゼTPAPと相互作用するタンパク質の探索を行い,精子形成過程でTPAPと同調して発現するCPSF160とCPEB2を候補分子として同定した。組換えタンパク質を用いたプルダウン法によって,TPAPはCPSF160と,CPSF160はCPEB2とそれぞれ相互作用していることが明らかになった。また,抗TPAP抗体を用いた共免疫沈降を行い,分子シャペロンであるHsp70.2が沈降物に含まれていることを見いだした。現在,TPAPがこれらのタンパク質とどのような複合体を形成して,どのようにmRNAポリA鎖伸長に関与しているかを検討中である。 (2)TPAPが制御するTAF10の特異的な核輸送システムを調べるために,まず抗TAF10抗体を用いて共免疫沈降を行った。その沈降複合体に,モータータンパク質KIF2AとポリA鎖結合タンパク質PABP1が含まれていた。興味深いことに,TPAP欠損マウス精巣ではKIF2AのりmRNA量は野生型と同じであるが,そのタンパク質量は激減していた。さらに,KIF2AのmRNAポリA鎖伸長がTPAP欠損マウスで不完全であった。以上の結果は,TPAPがポリA鎖伸即長によってKIF2Aの翻訳を制御し,ひいてはTAF10核移行に関与していることが示唆された。
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