研究概要 |
1.外胚葉と裏打ち中胚葉の位置関係の変化を、ケージド蛍光色素を用いて調べた。その結果、正中軸組織および孵化酵素細胞は、嚢胚初期において、シュペーマンのオーガナイザーに相当する胚盾と呼ばれる領域の中に存在するが、その後、すみやかに分離することが示された。また、正中軸組織と神経組織の前後軸に沿った隣接関係が極めて動的であること、例えば、発生後一日目の胚においては脊索の先端は後脳第4から5節に位置するが、嚢胚後期には後脳と中脳の境界に付近にあり、その後、後退していくことが証明された。 2.Kaedeは紫外線照射によって緑から赤に蛍光色が変化するヒユサンゴのタンパク質であり、培養細胞での有用性が報告されている。私達はin vivo脊椎動物胚への初めての応用を試みるためゼブラフィッシュを用いて実験を行った。細胞の形態をより鮮明に見るため、Ga14のシステムを使って、神経細胞にKaedeと膜局在性GFP,核局在性YFPを共発現させた。単一神経細胞を選び、その細胞体に紫外線を照射したところ、赤い蛍光が軸索、樹状突起、成長円錐に広がった。赤い蛍光は比較的安定でその神経細胞の発生過程を数日にわたって観察できた。とくに、複数の神経突起が接触したり束なっていたりするところで、隣接する神経細胞との関係を可視化でき、神経ネットワークの形態的形成過程の研究に適していることが示された。もうひとつの重要な応用は、大局的形態形成運動の可視化である。Kaedeを発現させた胚に小さなUVスポットをあてると、その場所の外胚葉と裏打ち中内胚葉がカラム状に同時ラベルされる。私達は、それぞれの胚葉上のスポット間のずれを一定の時間間隔で観察することにより、ひとつの胚葉と隣接する胚葉が相対的にどう動いているかを解析できた。
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