骨標本からミトコンドリア遺伝子タイプの判定を行うために、遺伝子の抽出条件や増幅条件等の分析方法を検討している。現生種ならびにニホンザル絶滅地域である種子島由来の骨標本を使って試験的に遺伝子分析を進めているが塩基配列を解読するまでには至っていない。 現生のニホンザル地域個体群にみられる東西分化を調査するため、未調査地域からの試料収集と分析を進めた。東日本地域では新たに中部山岳地域と北関東地域の試料を得て、ミトコンドリア遺伝子のDループ領域の412塩基対の配列を解読した。これまでに得ている結果と比較した結果、東北地域への集団拡大に関与した可能性のある新しい遺伝子タイプをもつ個体群の生息地点が確認できた。一方、西日本地域では九州の個体群がもつ遺伝子変異を評価するため、熊本県と宮崎県で血液と皮膚の試料を採取し、ミトコンドリア遺伝子の塩基配列を解読しつつある。 また、絶滅地域に生息したサルの遺伝子タイプを調査するため1民間信仰で祀られた厩猿(まやざる)とよばれるサルの頭骨ないしは腕を探索した。この結果、東北地方では新たに岩手県南部と宮城県で所有者を発見した。また、これまで存在が確認できていなかった地域のうち紀伊半島でも所有者を発見した。三重県南部と和歌山県南部地域では数例の腕を祀る例が認められた。これら新たに発見した地域においは、入手経路等の関連情報を集めるとともに、所有者の許可を得てその一部から分析用に標本を採取した。
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