研究課題/領域番号 |
15658004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥本 裕 京都大学, 農学研究科, 助教授 (90152438)
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研究分担者 |
間藤 徹 京都大学, 農学研究科, 助教授 (50157393)
中崎 鉄也 京都大学, 農学研究科, 助手 (60217693)
谷坂 隆俊 京都大学, 農学研究科, 教授 (80026591)
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キーワード | イネ / 穂ばらみ期対冷性 / 地下部 / 低温耐性 / ホウ素 / 溢泌液 |
研究概要 |
北海道のイネ品種きらら397に高度耐冷性品種Silewahより耐冷性遺伝子を導入した系統BT23および耐冷性極弱系統EG3に北海道品種はやこがねより耐冷性を導入した系統CTH5を供試して、幼穂形成期に地下部に低温処理(12℃)を施した。その結果、耐冷性品種・系統(BT23およびCTH5)では、地下部冷温処理による種子稔性の低下はほとんど認められなかったが、耐冷性弱のEG3およびきらら397では、それぞれ出穂前18日および14日前から6日間の冷温処理で種子稔性が大きく低下した。この時期は、減数分裂期から小胞子形成前期に相当することから、地下部冷温に対する感受期は穂ばらみの冷害の感受期とほぼ同じ時期と考えられた。地下部冷温処理中も地上部幼穂付近の温度が20℃以下に低下しないことから、冷温処理による種子不稔は低温の直接効果ではなく地下部の養分吸収能の低下によって誘導されると考えた。この点を明らかにするため、根から供給される溢泌液量および溢泌液中のホウ素、マグネシウム、およびカルシウム含量に対する地下部冷温処理の効果を調査した。その結果、低温処理により溢泌液の量が激減すること、耐冷性系統CTH5では溢泌液の減少がほとんど認められないことが判明した。また、冷温処理によって幼穂中のカルシウム含量が著しく低下すること、および低温感受期の幼穂ではホウ素濃度が高く発育に伴ってホウ素濃度が低下することが観察された。以上のことから、穂ばらみ期耐冷性遺伝子をもつ系統のなかには地下部の低温処理による養分吸収能の低下にも耐性をもつものがあること、および穂の発育に必要となるホウ素やカルシウムなどの供給不足によって種子稔性の低下が生じる可能性が認められた。
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