研究課題/領域番号 |
15658004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥本 裕 京都大学, 農学研究科, 助教授 (90152438)
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研究分担者 |
谷坂 隆俊 京都大学, 農学研究科, 教授 (80026591)
中崎 鉄也 京都大学, 農学研究科, 助手 (60217693)
間藤 徹 京都大学, 農学研究科, 助教授 (50157393)
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キーワード | イネ / 地下部 / 低温耐性 / RGII |
研究概要 |
穂ばらみ期耐冷性が異なる8品種・系統、はやゆき(強)、農林20号(極弱)、BT9(強)、きらら397(中)、EG3(極弱)、CTH5(強)、GVF4およびGVF33を供試して、地下部冷温処理を行った。BT9はきらら397に高度耐冷性品種Silewahより耐冷性遺伝子を導入した系統であり、CTH5、GVF4およびGVF33は極弱系統EG3にはやこがね、愛国および神力より耐冷性遺伝子を導入した系統である。冷温処理は幼穂形成期に9日間12℃の冷温水槽にポット地下部のみを浸すことによって行った。耐性弱の系統では出穂前12日からの処理において、CTH5を除く7系統で時期特異的な種子稔性低下が観察された。これは、減数分裂から小胞子形成期に相当し、穂ばらみ期の冷害感受期とほぼ等しい。また、BT9を除く7系統では着生頴花数に関して出穂前12日もしくは9日からの低温処理によって時期特異に減少するのが認められた。地下部冷温処理により、どの遺伝子型でも溢泌液量は1/3以下に減少することから、頴花発育に必要な養分の供給不足が頴花の退化を誘導すると考えられた。発育中の幼穂のホウ素濃度は出穂前14日では10ppm程度と高いが出穂期には5ppmまで低下した。したがって、冷温感受期の穂ではホウ素の需要が高く、地下部冷温処理によって供給量が不足していると考えられた。また、同じ材料を冷水恒温槽に漬けて地上部を冷温処理して冷害を再現した場合、花粉壁の棒状構造が未発育になり、正常花粉では棒状構造内にのみ観察されるRGIIのシグナルが、冷温処理区では花粉の内壁側にも認められた。RGIIが花粉内部に集積している様子が確認されたことから、ホウ素は頴花の正常な発育、花粉の正常な発達に重要な役割を果たしており、地下部冷温処理によるホウ素供給不足が両者の正常な発育を阻害し、種子稔性低下をもたらすと考えられた。
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