研究概要 |
本研究では、メヒシバ、チカラシバなどのイネ科雑草に寄生するクロボ菌を用いて、これらの感染機構を明らかにするとともに、その結果をもとに有効な接種方法を確立し、繁殖制御効果を検定することを目的として研究を行っている。本年度の研究概要は以下のとおりである。 (1)メヒシバ、ヒエ、ギョウギシバ、チカラシバなどのイネ科雑草に寄生するクロボ菌5種(Ustilago syntherismae, U.sphaerogena, U.cynodontis, Spacelotheca pamparum, Moesziomyces bullatus)について、野外よりクロボ胞子を採集し、その発芽力を維持するため、低温に保存した。また同時に、これらの宿主植物の健全な種子も採取し、保存した。 (2)採集した上記クロボ菌の乾燥標本を作製し、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による観察を行い、その形態を明らかにし、種名の確認を行った。 (3)上記5種のクロボ菌について、培地上で胞子を発芽させ、その発芽様式を明らかにした。また、核を蛍光染色し、蛍光顕微鏡を用いて観察し、発芽に伴う核の行動を明らかにした。その結果、5種のクロボ菌は、それぞれ特徴ある発芽様式を有していることが示唆された。 (4)上記5種のクロボ菌を発芽させた後、担子胞子を形成させ、担子胞子由来の培養株の確立を行った。その結果、合計48菌株を得ることができた。これらは、培地上で保存し、今後の、交配試験や接種試験に用いる予定である。 (5)上記5種のクロボ菌について、その侵入・感染過程を明らかにするため、クロボ胞子による宿主植物への接種試験を行なった。また、宿主植物表面上での,クロボ胞子の挙動を明らかにするため、接種後、試料を採取し、走査型電子顕微鏡による観察を行った。
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