研究概要 |
これまでに得られた研究成果は以下に示すとおりである。 1)さまざまな土壌を採取し,ブドウ枯葉を混合培養したとき,特に多量のエチレンを生成する土壌を選び出した。その土壌から糸状菌を分離し,その中でブドウ枯葉脂質からエチレンを大量に生成する糸状菌を4菌株分離した。これらの糸状菌の形態学的および分子生物学的同定を行った結果,菌株KII-1はPenicillium ochrochloronと最も近縁な種であることがわかった.また,菌株KII-2はUmbelopsis isabellina (別名:Mortierella isabellina,Micromucor isabellina)と,菌株KIIー4はPenicillium adametziiの塩基配列と非常に高い相同性を示し,形態学的特徴も一致した.しかし,菌株KII-3は,分子生物学的同定結果からCunninghamella bertholletiae (別名:Cunninghamella elegans,Cunninghamella echinulata var.elegans)と最も近縁であったが,供試した菌株とCunninghamella bertholletiaeとの形態学的な特徴は一致しなかった.そのため,菌株KII-3はCunninghamella bertholletiaeとは異なる新規の糸状菌として,Cunninghamella ochia Ochiai and Ishiiと命名した。 2)1)項に加えて,さらに採取した土壌431種類およびぼかし肥3種類を用い,特に脂質からのエチレン発生量が多かった土壌やぼかし肥の中からエチレン生成能の高い糸状菌や細菌の探索を行った。その結果,エチレン生成能が高い新たな糸状菌12菌株および細菌26菌株を分離し,それらの同定を行った。なお,細菌によるエチレン生成量は,総じて糸状菌による生成量よりも2〜3倍多かった。 3)ブドウ枯葉以外にもワイン製造時に得られる絞り粕から抽出した脂質を用いて,糸状菌によるエチレン生成を調べた。その結果,いずれの絞り粕脂質添加区でも脂質無添加区の場合よりはエチレン生成量が多かったが,その生成量はブドウ枯葉脂質添加区の場合よりも著しく低かった。
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