研究概要 |
本研究課題では、Cucumber mosaic virus (CMV)抵抗性遺伝子RCY1その対立遺伝子であるTurnip crinkle virus (TCV)抵抗性遺伝子HRTを比較することにより、両ウイルス抵抗性の特異性を決定している分子機構を明らかにすることを目的とした。その結果、(1)RCY1とHRTがコードするタンパク質のアミノ酸配列を比較したところ、特にleucine-rich repeat (LRR)ドメイン内でアミノ酸が変化していることが明らかになった。また、(2)両LRRドメイン内での同義置換と非同義置換の割合を調べたところ、非同義置換:同義置換が1以上であったことから、LRRドメイン内では進化の過程で宿主とウイルスの相互作用によるdiversifying selectionが生じている可能性が考えられた。さらに、(3)両ウイルスに対する抵抗性の分子機構の多様性と共通性を解析する実験系を得るため、RCY1をもつシロイヌナズナecotype C24とHRTをもつecotype Di-17を交配し、その後代からRCY1のみをもつもの(RCY1ホモ)、HRTのみをもつもの(HRTホモ)、RCY1とHRTの両方をもつもの(RCY1,HRTヘテロ)を選抜することができた。合わせて、(4)シロイヌナズナのcDNA約9,000クローンをスポットしたマクロアレーを用いて、CMV抵抗性発現に伴う宿主遺伝子発現の網羅的解析を行い、特異的に発現変動する遺伝子群を同定した。次年度は病原体認識ドメインの解析に加え、(3)で得られた交配個体を用いて、(4)で確立したマクロアレーによる遺伝子発現の網羅的解析を行い、CMVとTCV抵抗性の分子機構の比較解析も行いたい。
|