本研究では、植物に内生する有用放線菌の探索を目的として、野外生育のシャクナゲ、カルミアからそれぞれ102菌株、90菌株の内生放線菌を分離した。シャクナゲ菌株のうち、Streptomyces galubusと同定されたR-5株でシャクナゲ組織培養苗を処理すると、苗に抵抗性が誘導され耐病性組織培養苗になることが明らかとなった。さらに、本菌株とは異なる未同定のR-52株が、組織培養苗の発根および支根の分裂を促進することを突き止めた。この性質は組織培養苗の活着を促進し、馴化効率を高める効果を期待できる。現在、両菌株を同時に組織培養苗に処理し、活着率が高く、しかも耐病性のシャクナゲ苗の作出を目指している。カルミア菌株のうちStreptomyces pandanusと同定されたAOK-30菌株を、組織培養苗が生育するフラスコに投入すると、同苗も耐病性になることを確認した。さらに、本菌株で処理した苗では、細胞浸透圧の上昇、細胞壁ヘミセルロース成分の増加、維管束周辺のリグニン化促進がおこり、結果的に苗が耐乾燥性がになることを実証した。馴化過程ではフラスコから取り出した組織培養苗をビニールトンネルなどの高湿状態で生育させるため、必然的に病害発生率が高くなるが、放線菌処理によって耐乾燥性となった苗は、通常のガラス室のベンチで馴化できることが明らかとなり、病害予防、省農薬、苗の徒長および軟弱化の防止に寄与する手法開発の目処がついた。
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