1.カラムを用いカキ殻等の数種資材で、富栄養化物質の栄養成分吸着を調査した。カキ殻への硝酸吸着は無く微量の硝酸が溶出し、活性炭で吸着は大きく、堆肥はその1/2で、ゼオライトはわずかに吸着した。カキ殻のリン吸着は活性炭の70%で、溶出は堆肥から多量で、ゼオライトからも溶出した。カキ殻に陽イオン交換能を持つがアンモニアが溶出し吸着は無く、ゼオライトの吸着が大きかった。以上の結果は、pH(4〜8、5段階)に影響されなかった。真砂土(pH5.79)をカキ殻で中和し、過リン酸石灰を混合後、pHの異なる水を流したところ、pH6〜8でリン吸着は多く、リン酸カルシウムとして保持されたと考えられた。カキ殻を粒径で篩別し、同様の実験を行ったところ、粒径が小さくなる程(表面積が大きくなる程)リン吸着は増加した。 2.根の伸長域を分けた根箱を用い、一方を炭酸カルシウム(炭カル)で、他方をカキ殻等で中和し、ホウレンソウを栽培した。15年度は高温による生育不良と考えられたので、1ヵ月早く4月上旬に播種した。しかし、4月が観測史上最も暑く、温度制御のできないガラス温室内で、生育は不良で、同一処理での反復も不揃いであった。5月中旬のとう立ち後、生育の良好であった根箱内の根を観察したところ、カキ殻で根が伸長する現象を確認できた。17年度は3月上旬に耐暑性品種を播種し、秋期は耐暑性コマツナで栽培を行う。 3.培地ホウ素(B)濃度を変え(0〜20mg/L、6段階)、水耕栽培を行い、吸収Bの酢酸ナトリウム可溶性画分と不溶性画分(細胞壁)への取り込みを調査した。要求量と生育反応が大きいホウレンソウは、不溶性画分への取り込みが地上部も根も大きく、根で水溶性Bはほとんど検出されなかった。要求量も生育反応も小さいスイートコーンは水溶性B割合が大きく、これらのことがB栄養に対する特性の差異を反映していると考えられた。
|