研究概要 |
微生物における核酸塩基ピリミジンの酸化的代謝を酵素レベルで解析していく過程で、代謝の初発酵素であるウラシル・チミン脱水素酵素の活性が生体微量元素セリウム(Ce)により活性化される現象を発見した。セリウムの生理機能の解明へ向け、モリブデン・鉄-硫黄クラスター・FAD含有型酸化酵素であるウラシル・チミン脱水素酵素の単離精製・諸性質の解明を行うとともに、精製酵素に対するCeの作用を、種々の電子受容体との相互作用に着目しながら解析した。 ピリミジン資化性菌Rhodococcus erythropolis JCM3132の無細胞抽出液よりUTDHの精製を行った。本酵素は人工電子受容体methylene blue、phenazine methosulfateなどを電子受容体として、ウラシルおよびチミンのバルビツール酸誘導体への酸化を触媒したが、NAD、NADP、FAD、FMNは電子受容体とはならなかった。単一に精製された酵素の未変性状態での分子量は355,000であり、SDIポリアクリルアミドゲル電気泳動により、分子量90,000、35,000、25,000の3つのサブユニットから成ることが判明した。精製酵素を過塩素酸で処理した遠心上清をHPLC分析した結果、本酵素1molは約1.7molのFADを非共有結合的に含有していることが判明した。 セリウムによる活性化現象を精製酵素を用いて解析したところ、この活性化現象はウラシル、チミン、5-ハロゲン置換ウラシルのいずれを基質とした際にも、また、methyleneblue、 phenazine methosulfateのいずれを電子受容体とした際にも観察された。
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