本研究では微生物用に新規なリボザイムをデザイン・構築し、これを代謝工学へ活用することにより、新たな微生物育種法を開発することを目的とする。本年度は、大腸菌のイノシンの大量生産に関与するpurA遺伝子とビフェニル代謝遺伝子(bphC)をターゲットに機能性リボザイムの設計・開発を試みた。 1)purA mRNAを標的としたリボザイムの構築。まずリボザイム発現宿主として、染色体上に正常なpurA遺伝子を保有する大腸菌FDRadd::KQ株にIPTG誘導可能なT7 polymerase遺伝子を含むDE3を形質導入したFDRadd::KQ(DE3)株を構築した。ついで、標的purA mRNAの立体構造を予測し、purA mRNAのループ構造近傍を選択した。さらに転写時のリボソームとの競合的結合を避けるためリボソーム結合部位を認識するリボザイムを含め3種のリボザイムをデザインした。pUC系高コピーベクター上のIPTGによる誘導発現可能なT7プロモーター下流に3種のデザインしたリボザイムを挿入し、purA遺伝子機能の抑制を試みた。形質転換体をイノシン生産培地で生育させ各種核酸生産量をHPLCにより測定した。その結果、リボザイム導入発現によるイノシン生産量の増加は認められず、3種のリボザイムによるpurA遺伝子の抑制は観察できなかった。 2)bphCを標的としたリボザイムの構築。リボザイムは上記の方法にてbphC mRNAの2次構造を考慮して3種デザインし、リボザイム発現ベクターに挿入した。標的bphC遺伝子は、リボザイムとの接触効率を上げるため、リボザイム発現ベクターと同一のベクターに挿入した。宿主はDE3を染色体に保有するBL21株を用いた。bphCを標的とするリボザイム発現菌株では、コントロールに比べ25%程度のbphC活性の低下が認められた。
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