本年度はin vitroでのリボザイムの触媒活性を調べ、大腸菌in vivoでリボザイムが効率的に働かない要因を調べた。まず、昨年度構築したリボザイム発現ベクターを用いてin vitro転写によりリボザイムを調整した。その結果、本来の転写産物である260ntの前駆体RNAの他に、ベクター内シス作用リボザイムによって切断された場合に生じる100ntのRNAと、目的のリボザイム本体を含む約160ntのRNAが検出された。従って、反応溶液中のMgCl_2を用いたシス作用によるRNA切断が起きていることを確認した。得られたリボザイムとpurA mRNAとをMg^<2+>存在下で混合し、切断活性を調べた。その結果、purA mRNAの150-164nt領域を認識するリボザイム(R2)が最も高い切断活性を示し、8-22nt領域(R1)と210-224nt領域(R3)を認識するリボザイムでは活性が極めて弱かった。しかし、最も活性の高いR2でも2.5時間の反応で多くの基質purA mRNAが残存しており、切断活性が弱いことが示唆された。リボザイムR1はpurAの二次構造上のステム領域R2とR3はループ領域を認識して切断するが、基質認識部位の二次構造と触媒活性とにおいて相関は認められなかった。リボザイムのin vitro転写では反応溶液中の10mM MgCl_2により30分間の反応で約半分のシス切断が起こったが、原核細胞では転写と同時に翻訳が始まるため、シス作用切断によるリボザイムの生起に引き続く、本来の目的であるトランス作用による切断では時間がかかりすぎると考えられる。従って、シス切断部位が無くトランス作用リボザイムのみを直接発現するリボザイム発現プラスミドを作製することが適切だと考えられた。
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