新たなコチレニンAによる強いヒト骨髄性白血病細胞分化誘導活性に注目し、その入手可能な構造類似化合物のフシコクシン(FC)についても構造と活性の両面から検討を行い、がん細胞分化誘導活性について重要な部分構造の特定を試みる。これらの動物実験系における有効性についても検討を加え、コチレニンAに優る強力なヒトがん細胞制御作用物質の創製を目指す。 1)FC類の調製と各種コチレニン類を含めたヒト骨髄性白血病細胞分化誘導活性の検討 (1)日本産の病原糸状菌であるモモ枝折れ病菌によるFC類の量的生産法を確立した。大豆粉培地による7日間液体振盪培養より、FC-Aとその3'-デアセチル体を各0.4g/L(計0.8g/L)レベルで得ることに成功し、それらのグラム単位での調製を実現した。(2)本菌の麸固体培養から、3位水酸化FC類の探索を試み、新規FCとして、3'-デアセチル-3αヒドロキシFC-Aに加え3β-水酸基を有するFC-Sを単離・構造決定した。(3)保存の粗抽出物から各種コチレニン類を再調製し、得られたFC類と共に、ヒト骨髄性白血病細胞HL-60の分化誘導活性を予備的に調べた結果、コチレニンCにも高い活性が見られたが、FC類にはほとんど分化誘導活性が認められなかった。なお、コチレニンAでは、ヒト肺癌細胞に対し動物実験系においても有効な結果が得られた。 2)コチレニンAとFC-Jの各種誘導体の調製 (1)残存する少ないコチレニンA試料について、糖鎖に存在する一置換エポキシドの各種誘導体の調製を試みた。現在、得られた幾つかの誘導体について分化誘導活性試験を依頼している。(2)コチレニンAのアセチル化物についても、(1)と同様に活性試験を依頼中である。(3)FC-J希塩酸で処理し、そのデイソペンテニル誘導体の調製に成功した。現在、この糖部分にエポキシ側鎖の導入を検討している。
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