研究概要 |
コチレニンAによる新たなヒト骨髄性白血病細胞分化誘導活性に注目し、その入手可能な構造類似化合物のフシコクシン(FC)についても構造と活性の両面から検討を行い、がん細胞分化誘導活性について重要な部分構造の特定を試みる。これらの動物実験系における有効性についても検討を加え、コチレニンAに優る強力なヒトがん細胞制御作用物質の創製を目指す。 1)ヒト白血病細胞分化誘導活性におけるコチレニンとフシコクシンの構造・活性相関の検討 これまでに調製した各種誘導体について、ヒト骨髄性白血病細胞分化誘導活性を評価した。 (1)コチレニンAから誘導した糖鎖エポキシドの各種化学変換物では、何れもコチレニンAより細胞分化誘導活性が低下した。(2)コチレニンと同じ3α-ヒドロキシ基を有するFC-Jと3'-デアセチル-FC-Aの各化合物(3α-OH-FC-J, FC-R)においては、分化誘導活性は認められなかった。(3)コチレニンFとIは、それぞれ糖の6'位にエポキシド側鎖とオレフィン側鎖を有するが、分化誘導活性は前者に強く現れた。(4)FC-Jの糖部にエポキシド側鎖を導入した新誘導体(FC-JE,2)を参照)は、分化誘導活性はほとんどなく、細胞毒性が強まった。以上の事から、分化誘導活性に必要な構造は、糖側鎖のエポキシドの存在、およびアグリコン部分の3,12位の両水酸基の欠如と考えられた。現在、FCの12位水酸基の除去とエポキシド糖側鎖の導入について検討を行い、貴重なFC-Jを用いる実験において目的の誘導体が得られる見通しとなっている。 2)フシコクシン類の各種誘導体の調製(前年度からの継続研究) Phomopsis amygdali F6株の培養により、貴重なFC-Jを数100mg調製した。得られたFC-Jを塩酸で処理し、そのデイソペンテニル誘導体を調製した。この糖部分にエポキシドを有する側鎖を4',6'間にアセタール型に導入した誘導体を調製した。新たなエポキシ側鎖を有するFC-J誘導体(FC-JE)は4種のジアステレオマー混合物であるが、この細胞分化誘導活性を評価した。結果については前項に記述した。
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