研究分担者 |
高尾 雄二 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (20206709)
藤田 雄二 長崎大学, 生産科学研究科, 教授 (80039726)
大久保 明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20111479)
長江 真樹 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (00315227)
石橋 康弘 長崎大学, 環境保全センター, 助手 (00212928)
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研究概要 |
海苔の色落ちの直接原因を解明するために,2001年から2003年にかけて正常海苔と色落ち海苔を含む海苔試料(生海苔7種および乾燥海苔70種)を収集し,光合成色素(クロロフィルとカロチノイド),色素タンパク質フィコビリン(フィコエリスリン,フィコシアニン。アロフィコシアニン)および構成元素の分析を行った。その結果,色落ち海苔では, 1)光合成色素クロロフィルとカロチノイドおよび色素タンパク質フィコビリンを構成する3種のタンパク質(フィコエリスリン,フィコシアニン。アロフィコシアニン)のすべての色素が正常海苔の半分以下に減っていた。可視光域の光を吸収するこれらの色素成分の減少が海苔の光合成能の低下を招き,バイオマスの減少と海苔としての色調劣化,色落ち(黒色が茶色に変色)を誘起することが示された。 2)構成元素のうち,Fe,Zn,Mn,Cu,P含量が正常の半分以下に減少していた。CaとMg含量には変化がなかった。 3)色素と微量元素の相関を求めたところ,クロロフィルやフィコビリンの量と必須元素の間に明瞭な相関が認めらた。Fe,Zn,Mn,Cu,Pは植物の光合成において必須元素であり,これらの元素は色素の生合成において不可欠の因子であることから,色落ちはこれらの元素の欠乏が色素合成を阻害した結果であると結論づけることができた。 4)では何故必須元素が欠乏したか,仮説として海洋食物連鎖系において同じく光合成能を持つ赤潮生物にこれらの元素を先取りされたために海苔が吸収できなくなったのではないか,と指摘し,有明海の潮流変動による栄養塩の供給不足など,多面的側面からの実験的証明を行いつつある。
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