大きく、分けて2つのプロジェクトを進めている。第一は、培養細胞系においてビタミンB6(B6)の抗腫瘍作用の解析である。第二は、大腸以外の腫瘍発現に対する食餌B6の効果を調べることである。 1)マウス由来マクロファージ様細胞RAW細胞株にLPS刺激を加えた条件下で、B6の影響を調べた。その結果、LPSによるCOX-2やiNOSの発現がB6により著しく抑制されることを見出し、この作用がB6の抗腫瘍作用の一端である可能性を示した。さらにこの作用の分子機構の解析を行った結果、この作用は、NFkBの活性化の抑制あること、このNFkBの活性化抑制にIKKのリン酸化阻害が関わっていることを明らかにした。ヒト結腸がん細胞HT29を用いた実験では、B6の添加により、細胞増殖が抑制されることを見出し、大腸腫瘍のin vivoの実験結果と一致した。 2)皮膚腫瘍の発現に対する食餌B6の影響を調べた。その結果、B6の摂取量の増加に伴って、腫瘍の発現の時期が僅かではあるが、むしろ短縮されることが判明した。ただし、B6の多量摂取により腫瘍の大きさが減少していることが示された。この結果は、B6摂取により、発ガンの初期の段階は、促進されるが、一旦腫瘍が形成されると、それ以降については、むしろ腫瘍の増殖を抑制していることを示唆しているものと考えられた。乳腺の腫瘍の発現に対する食餌B6の影響も検討した。その結果、皮膚腫瘍の場合とは異なり、腫瘍の発現の時期は、多量のB6の摂取により、遅れることが判明した。ただし、腫瘍の大きさについては、B6の影響は見られなかった。いずれの実験においても、大腸腫瘍のように著しい抗腫瘍作用は見られず、B6の作用について臓器特異性があることが判明した。
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