大きく分けて2つのプロジェクトを進めている。第一は、ビタミンB6(B6)の抗腫瘍作用の分子機構の解析である。第二は、大腸及びそれ以外の臓器の腫瘍発現に対するB6の効果を調べることである。 (1)前年度の実験では、マクロファージ様細胞を用いた実験により、B6が炎症性分子応答(COX-2やiNOS)の発現誘導を抑制することを明らかにし、この作用がB6の抗腫瘍作用の分子機構に関与していることを示した。さらに、この炎症抑制作用にB6によるIKKのリン酸化阻害によるNFkBの活性化抑制が関与していること壱示した。これらの結果がLPS投与マウスを用いたin vivoの実験においても見られるか否か検討を加えた。その結果、マウス肝臓においてもCOX-2やiNOS発現がB6摂取の増加により抑制され、その抑制機構にNFkBの抑制が関与していることを示した。 (2)前年度の予備的な実験において、乳癌の発現に対しても食餌B6摂取の増加により抑制されることが示された。今回は、さらにB6摂取量が段階的に異なる餌を与え検討を加えた。その結果、B6の推奨量(7mg/kg)と比べて、それ以上の摂取量(35mg/kg)では確かに乳癌の発現が抑制されるが、推奨量よりも少ない摂取量(1mg/kg)でも乳癌の発現が抑制される傾向にあることを明らかにし、大腸の場合とは異なることを示した。 (3)B6摂取と脂肪摂取量のマウス大腸上皮細胞の増殖に対する影響を検討した。その結果、B6摂取による細胞増殖の抑制効果が高脂肪食により著しく促進されることが示された。 (4)UVB誘発皮膚癌の発現に対する食餌B6の影響についても検討を行った。その結果、意外なことに、B6摂取の増加に伴って皮膚癌の発現がむしろ促進されることが判明し、大腸の場合とは異なる影響を示した。
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