研究概要 |
白色腐朽菌が産生する鉄酸化還元抑制物質に関して研究を行った。Ceriporiopsis subvermisopraの代謝物について、従来報告した木粉培地に加え、BIII培地とSDW培地においても3種の代謝物が生産されることを見出し、これらの物質を同定した。このうち、アルケニル側鎖をもつ一種の代謝物については、グリコール化とアセタール化、TMS化を組み合わせて構造解析を行なった。これら3種の化合物の中で飽和の側鎖をもつものについては、化学合成を行い。その鉄の還元抑制効果を詳細に解析した。即ち、NTA,EDTA,EGTA,などのキレート剤の存在下、非存在下における二価鉄の生成をBPSを用いて解析した。また、酸解離定数を滴定法により求めた。さらに、セルロース中においてフェントン反応を抑制するか否かを、デオキシリボース-TBARSアッセイにより調べ、本代謝物がセルロース存在下においてもヒドロキシルラジカルの生成を抑制することを明らかにした。鎖長の異なる誘導体の化学合成実験を継続中である。現在、中間体であるジカルボン酸のジメチルエステル誘導体の合成まで実験が進んでいる。また、鉄酸化還元抑制代謝物を水溶液に可溶化させる新規代謝物があることを発見し、その単離をHPLCを用いて進めている。C.subvermisopra以外の白色腐朽菌についてもスクリーニングを行なったが、C.subvermisopraがもっとも強い効果を示したため、本菌の鉄還元抑制物質の機能解析と類縁体の化学合成に集中して研究を行っている。
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