研究概要 |
ベントスや稚魚などの採集効率を高精度に推定し,データ取得から処理法にいたる分布密度推定法の総合的開発を試みた。 1.広田式ソリネット(網口幅60cm)にとりつけたホイール型距離計の更正を行い,距離計数1回転当たり3.8cmの更正値が得られた。大型ソリネットに付けた同仕様の距離計では4.0cm/回転(前原,1998)であったことから,ソリネット個別の更正値が必要と考えられた。 2.漁船曳網時の曳網距離に対して距離計で得た接地曳網距離の比率を接地率とすると,広田式ソリネットの接地率は0.9m/sの曳網速度で75.7%と推定された。この低い値の原因は,ソリネットの離底であるか,距離計回転不良であるか,今後検討する必要がある。 3.底面積0.5m^2のドロップトラップ(ボックス型方形区)で採集されたベントスと稚魚の分布密度を基準として,広田式ソリネットの採集効率を求めた。沿岸性の小型エビであるエビジャコCrangon uritai(平均体長±標準偏差:27.2±6.9mm)の採集効率はエビジャコの体長によって変化せず,56.3%であった。一方,マコガレイ稚魚では体長20mm以下で100%となったが,体長20mmを超えると15.5-16.2%に低下した。マコガレイ稚魚は体長20mmを超えると感覚や遊泳力が向上し,網口逃避するためと考えられ,体長階級別の採集効率を求める必要があることを示している。 4.網口幅1.5mの大型ソリネットに試作水中ビデオカメラを取り付け,水深100mの海底曳網中のソリ内部網口を撮影した。カレイやカジカ類はグランドロープの接近に反応して逃避するが,水中ライトには反応しなかったため,点灯撮影映像による画像解析が可能と考えられた。ベントスの多くはグランドロープ下を抜けており,主にソリによって舞い上がったものが砂塵とともに入網した。また,記録水中音からソリの接地を判断できた。
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