研究概要 |
1)クラゲ類の分布調査および形態学的手法による食性分析 2004年の5月から11月にかけて,若狭湾由良川および舞鶴湾伊佐津川河口域において稚魚ネットを用いたクラゲ類の採集調査を行った.5月下旬から6月上旬にはアカクラゲ,6月下旬にはミズクラゲが多く採集され,8月から11月にかけてはクラゲ類はほとんど採集されなかった.平均傘長はアカクラゲで11.4cm,ミズクラゲで14.5cmであり,両種ともに閉鎖的な湾の奥部である伊佐津川河口域で採集数が多かった.実体顕微鏡下での観察によると,魚類仔魚はアカクラゲでは胃内容物の4.2%,ミズクラゲでは6.3%を占めており,種別ではカタクチイワシが最も多く捕食されていた.しかし,消化が進み同定不能な仔魚や卵も多く認められたため,DNAによる同定の必要性が確認された. 2)カタクチイワシ卵・仔魚由来DNA検出方法の検討 上記調査によりカタクチイワシの捕食例数が多いことが明らかになったため,本種を対象としてクラゲ類による被食減耗の定量的把握を目指す.まず,形態的に同定不能な胃内容物からカタクチイワシを検出するため,カタクチイワシのミトコンドリアDNAのみを特異的に増幅することのできるPCRプライマーを設計した.対象領域は16SリボゾームRNA遺伝子の後半部分とし,クロスチェックを行ってこのプライマーを用いたPCR増幅の種特異性を確認した.またカタクチイワシとミズクラゲの組織を混合したうえでのDNA抽出・PCR増幅を行い,増幅が阻害されないことを確認した.次年度はこの検出手法をフィールドで採集されたクラゲ類に適用する予定である.
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