研究概要 |
深海域に生息する魚類の嗅覚系は索餌行動や繁殖行動において大きな役割を果たすと考えられる。しかし、どのようなニオイがどのような行動を誘発するのかについては全く調べられていない。本年度は、電気生理学的実験に加えて、行動学的実験に有用であることが昨年度すでにわかっているムラサキヌタウナギE.okinoseanus、コンゴウアナゴS.parasitica、およびホラアナゴS.affinisを用い、これらの魚種が様々なニオイ刺激に対してどのような反応を示すのかを系統的に調べるための実験装置の構築を行なった。塩化ビニル製の長方形チェンバー(115×31×15cm)を設置し、チェンバー内(水中)とチェンバー上部に観察のための赤外線-カラー自動切り替えCCDカメラを設置した。観察は離れた実験室内で行なった。ニオイ溶液刺激放出ノズルを実験魚頭部に近づけ、人影によるストレス、学習を防ぐために実験室から遠隔操作により電磁弁のON, OFFを行ない刺激溶液の放出・停止を行なった。チェンバー内には絶えず飼育水を流し、緩やかな流水条件下で嗅覚刺激実験を行なった。ニオイ刺激溶液には蓄養中に餌として与えている魚肉抽出液、および種々のアミノ酸を用い、コントロールには何も含まれない飼育水を用いた。予備実験の結果、本装置を用いることにより上記魚種のニオイ刺激に対する反応が正確に記録できることがわかった。 また、深海域におけるスカベンジャーとして重要な生態学的地位を占めると考えられるオオグソクムシB.doderleiniを用いた行動学的実験のための装置(円形チェンバー)も同時に開発した。完全な遮光環境下において行動を観察することを可能にするために赤外線発光ダイオードを用いたフラッシャーを自作し、背部に装着させて反応をトラッキングした。本装置も誘引、忌避行動の観察に有用であることが確認できた。
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