研究概要 |
本年度は、先ず抗アワビ・アルギン酸リアーゼHdAly抗体を作成し、それを用いたウエスタンブロッティングにより、クボガイ、タマキビ、カサガイ、エゾボラ、ホタテガイ、カキ、およびウバガイの内臓抽出物中のアルギン酸リアーゼの存在を検索した。その結果、クボガイの抽出物だけがHdAly抗体と明らかな反応性を示した。また、反応したクボガイ・タンパク質の分子量はアワビHdAlyの28,000よりもやや大きく、約30,000であることが明らかになった。一方、酵素活性を指標にアルギン酸リアーゼの存在を検索したところ、抗HdAly抗体に反応しなかったタマキビガイの抽出物にもリアーゼの存在が示された。そこで、クボガイとタマキビガイの内臓抽出液から70-100%飽和の硫安分画とCM-Toyopearlカラムクロマトグラフィーによりアルギン酸リアーゼを精製し、それらの基本的性質をアワビHdAlyのものと比較した。その結果、クボガイ・アルギン酸リアーゼの分子量は約30,000で、至適pHおよび至適温度などにおいてアワビHdAlyと類似することが明らかになった。一方、タマキビガイ・リアーゼには、分子量37,000,34,000,および29,000の3種があり、アワビHdAlyと比較して熱安定性は約10℃高く、より広いpH範囲(pH3-11)で安定であることが明らかになった。また、N末端アミノ酸配列の分析によれば、クボガイ・リアーゼはアワビHdAlyと約85%の配列同一性を示すHdAlyと近縁の酵素と考えられたが、タマキビガイの3種の酵素はアワビHdAlyと全く配列相同性をもたない異なるタイプの酵素と考えられた。本研究の結果は、軟体動物のアルギン酸リアーゼには、アワビ、クボガイ・タイプと、タマキビガイ・タイプの少なくとも2つのタイプがあることを示している。
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