研究概要 |
今年度は研究の初年度として,調査地の選定とその周辺土地利用や水利用状況の把握などを実施した。加えて,これまでにも関連する調査を独自におこなってきたことから,その結果の再検討もおこなった。 調査対象として,石狩川中下流域に位置する19の河跡湖とその集水域を設定した。 河跡湖の水質と周辺土地利用,河跡湖の利用状況などの関係から,河跡湖の特徴を把握した。さらに重点調査地を決定し,水質と水位,流入水量の連続測定を実施し,その結果をもとに河跡湖の水質変動のモデル化を試みた。以下に結果を示す。 ・多くの河跡湖で,窒素,リン,SSともに5月中旬から下旬にかけて濃度上昇がみられ,夏期には濃度低下することが確認された。 ・水質特性にもとづく河跡湖の類型化を,クラスター分析により求めた結果,流入河川の有無や河跡湖の位置が石狩川の左岸と右岸のどちらであるか,といったことが河跡湖の水質に影響していることがわかった。 ・重点調査をおこなった河跡湖について降雨期の水収支を求めた。 ・水収支と水質から河跡湖の水質変動モデルを考案した。このモデルは土地利用別タンクモデルと湖沼内の脱膣速度を勘案した生態系モデル,積雪・融雪期の水文状況を把握するためのモデルの3つのサブモデルからなり,その結果は良好なものであった。ただし潅漑期には複雑な水利用がみられ,実測値と計算値が大きく異なることがあった。また融雪期のデータが少なくモデルの妥当性を論じるには至らなかった。 次年度では,今年度得られたモデルの検証をおこなうために,とくに融雪期間を中心とした調査観測を計画している。
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