本研究の目的は、湾曲キャピラリーバリアーに関する実験方法を開発すること、および、平面上のキャピラリーバリアーの理論をベースに湾曲キャピラリーバリアーモデルを構築することである。平面状キャピラリーバリアーは、土壌の毛管現象を活用し、微細な毛細管隙で(主として上から)粗大な間隙を覆い、水や溶解物質が粗大間隙中に浸入しないように設計する技術であり、既に汚染物質の地下埋設技術などにおいて応用されている。一方、成層地下構造を持つ自然土層や、世界各地で発掘されている古憤の内部構造など、現地で実際に存在する湾曲キャピラリーバリアーの実態や原理はまだよく分かっていない。 そこで、まず初年度は、従来の傾斜平面キャピラリーバリアー実験を反復し、これまでのデータ、および理論的予測値との比較検討を行った。キャピラリーバリアー形成のため、細粒土として豊浦砂を用い、粗粒土にはガラスビーズを用いた。人工降雨装置を作成し、所定の降雨実験ができるような準備を行った。実験装置のサイズを適正にすることが重要なので、50cmレベルの小型実験装置から、80cmレベル、150cmレベルの大型サイズまで試作して比較した。傾斜平面キャピラリーバリアー実験終了後に、境界面を凸型および凹型に作成し、前者の方法を踏襲した降雨浸透実験を反復し、所定のデータを得た。理論的研究では、従来までに提案されている平面キャピラリーバリアーモデルの問題点を明らかにし、これらを改良し、さらに湾曲キャピラリーバリアーモデルを構築する必要がある。そこで、世界的に広く知られているKungの飽和流モデルと、Rossの不飽和流モデルにおいて、湾曲の接線勾配に着目し、凹型湾曲キャピラリーバリアーモデルを提案するに至った。しかし、凸型湾曲キャピラリーバリアーモデルについては未だ確立しておらず、引き続き研究を進める。
|