本研究の目的は、湾曲キャピラリーバリアーに関する実験方法を開発すること、および、平面上のキャピラリーバリアーの理論をベースに湾曲キャピラリーバリアーモデルを構築することである。平面状キャピラリーバリアーは、土壌の毛管現象を活用し、微細な毛細管隙で(主として上から)粗大な間隙を覆い、水や溶解物質が粗大間隙中に浸入しないように設計する技術であり、既に汚染物質の地下埋設技術などにおいて応用されている。一方、成層地下構造を持つ自然土層や、世界各地で発掘されている古墳の内部構造など、現地で実際に存在する湾曲キャピラリーバリアーの実態や原理はまだよく分かっていない。 第2年目である平成16年度は、初年度で明らかにされた湾曲キャピラリーバリアー現象についての知見をまとめ、論文として投稿することにした。そのため、初年度の実験データを吟味し、理論的計算を反復し、より進んだ考察を行って、農業土木学会論文集に投稿したところ、受理され、出版の運びとなった。論文をまとめる過程で、以下の事項が明らかになった。(1)Kungの飽和流モデルと、Rossの不飽和流モデル、Steenhuisの改良型不飽和流モデルの3者では、Steenhuisのモデルが最も良く実験値に一致することがわかった。(2)凹型湾曲キャピラリーバリアーでは、曲面の各位置における接線を決め、その接線に平面型のキャピラリーバリアー理論を適用することで、容易にダイバージョンキャパシティーを予測することができ、Steenhuisの改良型不飽和流モデルによって実験値を精度良く再現できることがわかった。(3)凸型湾曲キャピラリーバリアーでは、理論と実験値がほとんど一致しなかった。しかも、凸型キャピラリーバリアーは、古墳などいろいろな場所で歴史的に活用されている技術なので、平成17年度にぜひ解明したい。
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