研究概要 |
本研究は、秋田県の気候風土を活用した実用的植物工場の実現を目指し、栽培対象作物である生薬植物のオウレン(Coptis japonica)のクローン増殖法および人工環境下での栽培技術の確立を目的としている。 平成15年度は、クローン増殖法の確立のための実験を行った。従来のオウレンの組織培養は、薬効成分であるベルベリン獲得のための液体培養が主であり、苗供給を目的としたクローン培養法についての報告はほとんどない。そのため、オウレンのカルス生成に適した部位とホルモン濃度を解明することを目的として実験を行った。 葉、葉柄、花茎のそれぞれの部位を小片化し、ショ糖濃度3%のMS寒天培地上に植え付けて、18℃、暗所条件で培養を行った。ホルモン濃度は、2,4-Dを10^<-5>Mおよび10^<-6>Mの2段階、カイネチンを10^<-5>、10^<-6>、10^<-7>Mの3段階に変化させた計6試験区を設け、各区5サンプルずつを供試した。 実験の結果、葉小片、葉柄小片からはカルスは生成されず、花茎小片からは2,4-D 10^<-5>M、カイネチン10^<-5>Mの試験区よりカルスの発生が認められた。反復実験の結果、この培養条件により90%以上のカルス生成率が認められ、オウレンのカルス生成には、花茎を用い、2,4-D濃度10^<-5>M、カイネチン濃度10^<-5>Mとした条件が適していることが明らかになった。また、一部のカルスについては不定芽、不定根の発生が認められた。培養条件が全て等しいため、供試小片の個体差が原因と考えられるが、不定芽、不定根が発生する条件の明確化には至ってない。 現在、再分化に適した培養条件を明らかにするため、カルス、不定芽、不定根のそれぞれを対象に、2,4-D、カイネチンの濃度をそれぞれ10^<-6>M以下にした条件下で培養実験を実施しており、不定芽、不定根からの再分化条件は明らかになりつつある。
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