研究課題/領域番号 |
15658073
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
鳥巣 諒 岩手大学, 農学部, 教授 (70038264)
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研究分担者 |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 助教授 (50232434)
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キーワード | 恒温植物 / ハス / カオス時系列解析 / カオスの発現 / 熱収支方程式の構築 / 熱伝達係数の同定 / 発熱量の推定 |
研究概要 |
研究目的: 恒温植物ハスの発熱現象の解明を次の2つの視点から行なった。(1)ハスの発熱する体温の時系列データをカオス時系列解析手法を用いて、体温変動の中にカオスが発現することを確かめること、(2)発熱時・非発熱時の花托部分の熱収支方程式を構築して、熱伝達・熱放射に関与する熱定数を同定し、ハスが発生する熱量を推定すること。 実験方法と実験場所 佐賀市内のハス田(佐賀市本庄町北緯33.3:東経130.3)で、ハスの開花時期(平成17年6月24日から7月14日)、ハスの花托部分の体温と気温を測定した。測定個体は40体で、温度測定には温度サーミスタ方式のデジタル温度記録計を利用し、サンプリング時間は1分とした。 ハスが恒温植物であることの再確認 ハスの花托部分が3〜4日間発熱し、30〜35℃を保ち、外気温より10〜15℃程度高い温度となった。また、太陽放射の無い日没から日の出までの間、温度制御を活発に行なっていた。 ハス体温(花托部分)のカオス時系列解析 ハス体温のパワースペクトル解析から遅延時間τを160分と決定し、3次元相図を用いてアトラクタを作図した。次に、相関次元解析を行い、埋め込み次元(16〜17)と相関次元(2.2)を求めた。さらに、リアプノフスペクトル解析を実施し、最大リヤプノフ指数とKSエントロピーがともに正の数となり、軌道不安定性・長期予測不能性が確認された。このことから、実験開始前の予想通りハス体温の変動にカオスが発現することが確認された。 ハスの発熱基礎方程式の構築と発熱量の推定 ハス花托部分の発熱時期の熱収支には、ハス自身の発生する発熱量のほかに、太陽からの熱放射、気温からの熱伝達、周囲環境からの熱放射・熱伝達が影響する。ここでは、太陽放射のない夜間部の熱収支に着目し、測定した温度データを入力として未知の発熱や各熱定数を求めるという逆問題(inverse problem)を解いた。 これにより、パラメータの同定と発熱量の推定が可能になった。求められた熱特性パラメータは、空気から花托への熱伝達率が1.2kJ/10min m^2Kであり、発生した発熱量は、150〜300J/10minであった。
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