研究概要 |
放卵直後の鳥類受精卵中で発生する胚盤葉の明域中央部に極在する生殖前駆細胞を用いて、多種間のキメラ個体を作出することを目的とし本研究を行った。ドナーとして黒烏骨鶏、ロードアイランドレッド、横斑プリマスロックを使用した。レシピエントとして白色レグホンを使用した。各ドナー品種の放卵直後の受精卵より胚盤葉を採取した。PBSを用いて胚の周辺に付着する余分な卵黄、卵白および血液を完全に除去した。胚盤葉明域中央部に局在する生殖前駆細胞のみを選択的に採取した。放卵直後の白色レグホンの受精卵から濃厚卵白を除去した後にUV照射し胚発生を阻害した。さらに胚盤葉明域中央部の細胞塊を除去しレシピエントとした。事前に調整済みの3種ドナー細胞を試験管内で混合した。この混合ドナー細胞をレシピエント胚へ顕微注入した。全胚培養器を用いて培養し孵化個体を得た。孵化した雛のうちドナー由来の羽毛色が混在する個体を体細胞系列キメラと判定した。本年度は操作胚から3種間キメラおよび4種間キメラが作出された。これらの多種キメラは現在性成熟に向けて育成中である。今後、性成熟に達した段階でレシピエント各品種の雄または雌を用いて交配する。こうして果たして3種以上の純粋な後代雛が産出され得るかどうか検討する。こうして効率的に多種の純粋な後代雛を一羽のキメラを用いて生産し新たな家禽育種戦略の構築に活用する。同時に各ドナー細胞に別個のレポーター遺伝子(lacZ,、SV-βgal、RSV-GFP、等)を導入しそれぞれの遺伝子発現を解析する。こうして多種キメラを鳥類遺伝子発現のモデル動物として活用する。
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