研究概要 |
ニワトリの雄生殖機能は成熟後約1年頃から次第に低下するが、この機構は明らかにされていない。本研究では、抗精子免疫応答の発現により、精子密度が低下する可能性を推定した。本研究は、鳥類の雄生殖機能を改善するための新しい技術の開発を目指した基礎的研究として、生殖器における免疫機能と受精能との関連を明らかにし、さらに性ステロイドによるこの免疫機能の制御機構を明らかにすることを目的として行っている。本年度は、オス生殖器の免疫担当細胞の分布に及ぼす加齢と性ステロイドの影響について追究した。 精巣の間質細胞と精巣上体の管状系の上皮と上皮下組織に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII発現細胞,CD4+およびCD8+T細胞が分布することが免疫染色法で明らかにされ,これらの免疫担当細胞と加齢との関係を解析した結果,性成熟に伴って増加し,さらにその後の加齢に伴って増加することが明らかになった。また高齢鶏では精細管や精巣輸出管内の精液にこれらの免疫担当細胞が混入することも明らかにされ,精子に対する免疫応答が起こることが示唆された。次に,これらの免疫担当細胞の分布に及ぼす性ステロイドの影響の解析するために,未成熟鶏にテストステロン(T)またはエストラジオールベンゾエイト(EB)を投与すると、Tは有意な影響を示さなかったが,EBは精巣状態の管状系組織のT細胞を増加させることが明らかとなった。これらの実験結果から、生殖器の免疫機能に及ぼす加齢と性ステロイドの影響を受けるものと考えている。
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