研究概要 |
N-結合型糖鎖合成において糖鎖転移に重要な役割を果たす酵素系の一つであるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)遺伝子をTrypanosoma bruceiからクローニングし、その構造解析を行った。同遺伝子は2種類見出され、それぞれOST1,OST2と命名した、N-グリコシレーションに関わるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)遺伝子をクローニングした。すなわち、Leishmania major(L.major)のOST STT3サブユニットの運伝子配列を基にして、プライマーを設計し、PCRにより2種類のOST遺伝子をT.brucei染色体DNAから得た。それらを、TbOST I、TbOST IIと命名し、それぞれ2,430kbp、2,406kbpの遺伝子全長を解析した。予想アミノ酸配列の比較では、他生物の既知OST STT3サブユニットとは高い相向性を示し、ドメイン構造も保存されていることが明らかとなった。それぞれの転写産物のサイズは前者では3.5および4.5kb、後者ではおよそ3.5kbであった。予想アミノ酸配列から設計した合成ペプチドにより作製した免疫血清は原虫の74kDaの蛋白質と皮応した。さらに、TbOSTを2本鎖RNA干渉用のベクターに組み込んで、dsRNAiによる本遺伝子産物の機能解析を試みた。その結果、本遺伝子の発現抑制は致死的であり、TbOSTが原虫の生存に必須の蛋白質をコードしていることを明らかにした。TbOST発現を抑制された原虫細胞質内には濃染する顆粒構造が出現することが米学顕微鏡ならびに電子顕微鏡観察で認められた。これらの出現形質は原虫蛋白質のN-グリコシレーションの阻害とマンノース6燐酸系の阻害の結果と考えられた。また、機能的にもTbOSTは酵母菌OST STT3サブユニットの相当する分子と考えられた。
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