研究概要 |
1.グレリンのミルク合成促進作用: グレリンの能動免疫ラットから分娩された胎児は、通常の胎児よりも体重が低い傾向にあった。泌乳期中では、この差はさらに広がり、能動免疫ラットに肥育された幼児はミルク分泌量の低下に伴う体重の増加の割合が有意に低かった。リアルタイムPCRによる乳腺のカゼインmRNAの量もグレリン能動免疫ラットで減少した。以上の結果、妊娠中や泌乳期中の母体のグレリンを中和すると胎児や幼児の成長が損なわれることが判明した。 2.ウズラと哺乳類の摂食機構の相違: ウズラへグレリンを末梢投与すると、有意に摂食量が促進された。しかし、1nmol以上のグレリン投与では逆に摂食は抑制された。この濃度依存性の相反する理由として、1nmol以上では中枢へ作用し、一方それ以下では中枢へ作用する濃度に達しないのではと推測した。そこで、0.2nmolを側脳室に投与した結果、摂食の抑制が認められた。このことから、末梢でのグレリンは摂食を促進し、中枢での作用は逆に抑制すると考えられた。この結果は哺乳類と異なる。次に、哺乳類の摂食抑制物質NMUを同様に側脳室へ投与した結果、逆に摂食の亢進が認められた、このことから鳥類においては摂食調節機構が哺乳類とはかなり異なることが推測された。 3.成長におけるグレリンの役割: 胎児組織のグレリン受容体GHS-R mRNAを調べた結果、妊娠20日の胎児では皮膚、骨、筋、消化管、心臓、肺、脳にGHS-R mRNAの発現を認めた。妊娠14,15日では、脊髄において最も顕著で、脳、消化管が次に多く発現した。皮膚、骨、心臓では弱い発現であった。一方、肺では認められなかった。これらの結果は免疫染色の結果とほぼ一致した。妊娠母親の皮下に浸透圧ミニポンプを埋没し、慢性的にグレリンを投与した結果、グレリン投与群でのみ有意な胎児重量の増加が認められた。また、母親にグレリンを投与し、胎児への移行の有無を検討した結果、極めて容易に胎盤を通過する事、また胎児血中では半減期が長い事が判明した。
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