研究概要 |
我々は、ラット肝臓から新規なタンベク質を発見しその性質を明らかにしてきた。本タンパク質は過塩素酸で抽出されることからPerchloric acid soluble protein(PSP)と名付けられた。PSPの立体構造を解明した結果、PSPは2本のαヘリックスと6本のβシートから構成される単純な立体構造を示した。興味あることにPSPの立体構造や熱耐性、プロテイナーゼK耐性などの化学的性質は異常プリオンタンパク質と酷似していた。PSPを異常プリオンタンパク質のモデルとして用い、プロテアーゼをスクリーニングすると異常プリオン分解酵素の発見につながるかもしれないという発想に至った。(財)微生物化学研究会の協力を得て多くの微生物を入手し、その中からPSPを分解する酵素を分泌する微生物のスクリーニングを行った。数百種類もの微生物を培養し、その上澄み液を調査した結果、干潟から採取された放線菌の一種を培養した上澄み液からPSPを分解する酵素を発見した。BSEと類似した羊のスクレイピーの異常プリオンとヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病の異常プリオンを含む試験管にPSPを分解する酵素を混ぜて37℃で30分間置くと、両方の異常プリオンが全く検出されなくなった。精製された異常プリオン分解酵素は、分子量約20,000であり、至適温度は60℃、至適pHは9以上を示した。
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